一九八四年

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)
ジョージ・オーウェル
早川書房

〈ビッグ・ブラザー〉率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。しかし彼は、以前より完璧な屈従を強いる体制に不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと出会ったことを契機に、伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが……。

執筆当時の1948年に、1984年の全体主義化し、一つの党が思想も歴史も支配するようになったロンドンを描いた近未来SF小説。
近代化はされているも、豊かとは程遠い生活、次々と改竄される歴史、強制される思想、そして当局に常に監視されている毎日。
民主主義社会に生きる人間からすると地獄のような社会ですが、そんな中で新たな可能性を探る主人公の人間味溢れる悩みが切ないです。
また、新しい言語「新語法(ニュースピーク)」の導入や、恐ろしい党の支配方針など、社会的背景もしっかりと考えられており、物語の奥深さと厚みに感心します。
設定が大変緻密なので読んで理解するのに時間がかかりますが、その設定を理解した上で主人公たちの心情や思想の変化を考えると、より物語が楽しめます。
村上春樹が「1Q84」を執筆するきっかけになったと言う本作、SF好きなら是非一読の価値ありかと。