博士の愛した数式

410401303X博士の愛した数式
小川 洋子
新潮社 2003-08-28

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家政婦として働く「私」は、ある春の日、年老いた元大学教師の家に派遣される。彼は優秀な数学者であったが、17年前に交通事故に遭い、それ以来、80分しか記憶を維持することができなくなったという。数字にしか興味を示さない彼とのコミュニケーションは、困難をきわめるものだった。しかし「私」の10歳になる息子との出会いをきっかけに、そのぎこちない関係に変化が訪れる。彼は、息子を笑顔で抱きしめると「ルート」と名づけ、「私」たちもいつしか彼を「博士」と呼ぶようになる。

「数字」の面白さと、優しい愛が全編に溢れている、なんとも言えない作品。
読んだ後、人により一層優しくなれそうな一冊です。


80分でリセットされる記憶というハンデを持ちながらも、数学に関しては天才的な頭脳を持つ博士。
その博士と「私」とその息子ルートの奇妙なやりとりが、3人にあふれる「優しさ」「思いやり」をじんわりと伝えてくれ、読み終わったときには清々しい感動が残りました。
「僕の記憶は80分しか持たない」という自分の書いた貼り紙を起きると同時に見ることで、毎朝残酷な事実を宣告され、それを受け止める博士。
しかし悲愴感は漂わせず、数学と17年前のタイガースを愛し、マイペースで生きる博士の世話をしながら、数学と博士に興味を持っていく「私」とルート。
文章が淡々としているだけに、場面毎の情景がありありと目に浮かび、登場人物一人一人の気持ちがしっかりと伝わってきます。
最近あまり読んでないタイプの小説だったのもあって、ストレートに感動しました。
で、映画になりそうな話だなー、と思ってたらやっぱり映画になる模様。
■映画「博士の愛した数式」公式サイト
こちらも良い作品になりそうです。