ハウルの動く城
ハウルの動く城 特別収録版 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 宮崎駿 倍賞千恵子 ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント 2005-11-16by G-Tools |
愛国主義全盛の時代。王国の兵士たちが今まさに、戦地に赴こうとしている。銃には花が飾られ、歓呼の中を行進する兵士たち。荒地には、美女の心臓をとって喰らうという魔法使いハウルの、動く城まで現れた。
そんな町から離れて歩く、ひとりの少女がいた。主人公ソフィーは18才。荒地の裾野に広がる町で生まれ育ち、亡き父の残した帽子屋を切り盛りしている。
ソフィーはある日、町で美貌の青年と出会う。何かに追われているらしい青年はソフィーと共に天へ舞い上がったかと思うと、束の間の空中散歩にいざなう。夢のような出来事に心奪われるソフィー。しかしその夜、ソフィーは、荒地の魔女と名乗る魔女に呪いを掛けられ、90才のお婆ちゃんに姿を変えられてしまう。このままでは家にいられない!
ソフィーは荷物をまとめ、ハウルの棲む城があるという、人里離れた荒地を目指すのだった。
(Amazonより)
国際映画祭などをはじめ、数々の賞を受賞した話題作。
以下、ややネタバレありのレビュー。
全体としては展開も映像も音楽も宮崎アニメ以外の何物でもなく、十分楽しめました。間違いなく世界トップレベルのアニメの一つでしょう。何回も観て細かい描写や音楽など、拘りの作りこみを楽しめるアニメであることには間違いないかと。
映画が始まってまず引き込まれるのが異様な姿の「動く城」と素晴らしい音楽。ディティールまで久石譲の音楽はどの作品でも映画の魅力を何段階もアップさせるし、映像作品における音楽がどれだけ影響が強くて大切なものかを毎回気付かせてくれます。
そして近年の宮崎アニメの大きな懸念事項である俳優の声優起用については、思ったよりも悪くない、という印象。こちらが構えてしまっていたのもあるかもしれませんが、何の予備知識もない状態で観れば違和感ないのでは。木村拓哉も思ったよりハマってましたし、倍賞千恵子も老人になったときのソフィーの声の説得力がありました。
肝心のストーリーは、人間の老いと若さ、戦争と平和、という壮大なテーマの上に構築されているようで、単純なエンターテインメント作品、というよりは「もののけ姫」にも似たような位置付けの作品かと。そのせいか、設定などに若干の説明不足があったので、子供にはよく分からないところもあったのでは。例えばソフィーの呪いが弱まり、若返るための条件やハウルの心が悪魔の力に取り込まれていく過程など。観客に考えさせることでそのテーマをより強く印象付けようという監督側の意図も分かるのですが、もう少し分かりやすくても良かったです。将来子供がこの映画を観た時に、「なんで若返るのー?」とか聞かれたときに説明に窮しそうな気もしますし(笑)。
しかし考えてみると「指輪物語」にしろ「ハリー・ポッター」にしろ、小説の映画化は、その原作の設定が緻密に構築されていればいる程、映画では細かい設定の描写や説明が省略され、その場面の本当の意味などは原作を読んだ人にしか分からないのかもしれません。つまりは原作を読め、ということでしょうか。
とはいえ、最後の方で動く城がコンパクトになってバタバタ走り回る場面など、これぞ宮崎アニメ、という感じで思わず笑みがこぼれました。他にも「千と千尋の神隠し」のような遊園地的・びっくり箱的な要素もあり、この辺りのアニメだからこそできる表現を最大限に活かした演出は流石。コミカルとシリアスのバランス感覚も良かったです。観る側を飽きさせないテクニックとしては重要なファクター。
大人向けアニメとしては良いですが、親子で楽しめる、というアニメではないかと。
とりあえず原作を図書館で予約してみました。
「ハウルの動く城」シリーズボックスセット
ハウルの動く城 サウンドトラック