エンダーのゲーム
6歳の天才少年エンダーが宇宙生物「バガー」の艦隊と戦う司令官となるための成長と、その戦いの物語。
1986年ヒューゴー/ネビュラの、ダブル受賞作。以前に出た短篇集『無伴奏ソナタ』に収められた同題の短篇を、長篇化したもの。
昔の作品でありながらも、設定・ストーリー共に今も色褪せないSFの傑作です。
昔のSFというのは今のSFと違い、テクノロジーの進化や宇宙旅行、精巧なシュミレータなどは全て「未来」のことであり、それを以下に詳細まで読者にイメージさせるか、ということが大切なようです。それ故、80年代SFブームの作品はいずれも具体的な世界設定および詳細な描写が鍵になってる模様。
この作品はそれらの全てを満たしているだけでなく、バトルルームやゲームマシンの概念などもしっかりとリアルに組み立てられており、テクノロジーが発達している現在読んでも陳腐化していないあたりが驚き。
主人公の少年だけでなく、主人公の兄と姉もそれぞれ天才少年・少女の計画も面白いです。そして「ネット」という概念が、現在のインターネットとほぼ相違のないイメージで語られているのも特筆もの。SFは「夢の世界」ではなく、「いずれ実現しそうな未来」を描くことでその物語のリアリティが増すと思うのですが、このあたりも作者の力量が発揮されており、凄いの一言。
小さな子供に頼らざるを得ない、というあたりの説明が少し足りない気はするものの、大人の狡猾さの中で悩み、苦しみ、成長するエンダーがリアルに描かれています。
またエンダーが一兵卒からリーダーへ、そして指揮官へと成長していく過程で出会う人物たちも個性的で、魅力たっぷり。彼ら一人一人の物語も読んでみたいです。
映画化もしているようなので、是非そちらもチェックしてみたいところ。
また続編も沢山あるので、今後順に読んでいこうかと。