コンビニ・ララバイ

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池永 陽
集英社 2005-06-17

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小さな町の小さなコンビニ、ミユキマート。オーナーの幹郎は妻子を事故で亡くし、幸せにできなかったことを悔やんでいた。店には、同じように悩みや悲しみを抱えた人が集まってくる。堅気の女性に惚れてしまったヤクザ、声を失った女優の卵、恋人に命じられ売春をする女子高生…。彼らは、そこで泣き、迷い、やがて、それぞれの答えを見つけていく―。温かさが心にしみる連作短編集。
(Amazonより)

全編どこか切なくもの悲しいストーリーにも関わらず、読後に暖かい涙も流せる一冊。


何の気なしに手にとって、どんな話だか良く分からずに読み始めたのですが、一話目からコンビニのオーナーを襲った悲劇の話。こういうのって「もし自分がこうなったら」とか考え出すとたまらなくなります。
この本の中に出てくる人たちは、オーナーだけでなくコンビニの店員や客みんなが何か重いものを背負っており、それぞれが自分の人生について悩み、時には絶望したり。こういうのは誰の身にも起こり得るようなことなのかもしれませんが、そんなコンビニに集う人々を暖かく、時には厳しく迎えるオーナーやコンビニの店員。「賑やかだけど乾いている」というコンビニにどこか潤いがある、不思議なお店です。
良くも悪くもこのコンビニとの出会いがきっかけで人生を見直す人たち。人によってはそれはコンビニではなく、他のお店や、学校や、友人や、家族なのかもしれませんが、自分の人生に関わってくれるものっていうのはこんなにモノが氾濫している世の中でもそんなに沢山ないのかと。
だからこそ、自分に向けられた一つ一つの言葉や気持ちを汲み取り、考え、自分を省みて後悔の無いように精一杯生きていくべきなのかと思いました。