死者の代弁者
死者の代弁者〈上〉 塚本 淳二 早川書房 1990-09by G-Tools |
死者の代弁者〈下〉 塚本 淳二 早川書房 1990-09by G-Tools |
宇宙に進出しはじめた人類が初めて遭遇した地球人以外の知的生命体、それが昆虫型異星人のバガーだった。だがコミュニケーション不足のため戦争となり、最終的には双方の種族に不幸な事態を招いてしまった。その事件から3千年、銀河各地に植民して領土を広げていった人類はついに第二の知的生命体に遭遇した。あらたに発見した惑星ルジタニアに入植しようとしたところ、森に住んでいる動物ピギーが高度の知性と能力を持っているとわかったのだ。今度こそバガーのときのような過ちは繰り返すまい…。人類はピギーと慎重に交渉しはじめたが。
(Amazonより)
エンダーのゲーム続編。エイリアンと戦う、という分かりやすい目的のために少年エンダーが苦悩し、成長した前作とは趣が異なり、今度は異種との遭遇及びコミュニケーションがテーマとなっている作品。
まずびっくりしたのが、「エンダーのゲーム」の舞台から3000年が経過しているのに、エンダーとヴァレンタインが宇宙旅行を繰り返していたおかげで30歳しか歳をとっていないということ。前作でもメイザー・ラッカムがこの手法で歳をとっていない、ということがあったのですが、3000年とは思い切ったなー、という感じです。確かに一大宇宙国家が形成されるにはそれだけの年月がかかりそうなので、妥当と思える年月ではありますが。
物語のカギとなるのは地球人たちが出会った異種「ピギー」たちの奇妙な生態を如何に解明していくことか、というところ。ここに人間社会の倫理だとか、宗教観だとかそういうものが絡んでくることで登場人物たちは前作でエンダーが悩んだのとはまた違うレヴェルで悩み、そして「ピギー」達の起こした事件の意味を求めるわけですが、その過程が面白く、宗教や倫理の問題というのはいくら科学が発達しても人を悩ませるものであり、またそれに翻弄される人間は科学が発達しても本質は変化しないものだ、というところを見せてくれます。
科学がいくら進歩しても人間(地球人)が進歩しない、というのはSFといういわば「異世界」の物語を読むにあたって、結構重要なファクターなのかもしれない、と思いました。
エンダーは既におっさんと言える年になってしまってますが、既に伝説の人となっているエンダーがそうとは知らない人たちの前に現れ、「死者の代弁者」としての役割をこなす過程は、成長したエンダーの活躍を読むことができます。クールなようで相変わらず悩み多きエンダーもやはりこの作品の魅力の一つ。
ちなみにWikipediaによると作者はモルモン教の宣教師をやったりしてるそうですが、この作品中では宗教に偏ることなく、ニュートラルなスタンスで物語を綴っている様に思えました。
尚、このシリーズにまんまとハマっており、この後の「ゼノサイド」を読み始めているので、それも読了後また感想を書きたいと思います。